八鹿酒造株式会社|酒造りの現場で見た阿吽のチームワークと穏やかさ

酒というのは、そのブランド・銘柄が先行しがちで、蔵元がどこにあるのか意外と知られていないことが多い。

私自身も県外から大分県へ移り住んで“例の天気予報CM”を観たときに、これぞローカル!と強いインパクトを受けました。

その蔵元は玖珠郡九重町。こちらに移り住む前からなんとなく知ってはいましたが、なんとなーくです。

どちらかというと、商品のネームバリューが大きいので、ここにその蔵元が存在していることが不思議な感じ。

んー、言いたいこと…なんとなくわかりますかね?笑

一般のお客さん向けの直売所や見学もあるけれど、訪れたことのない地元の方も意外と多いのではないでしょうか?

私もそのひとり。たまたま近くを通った道すがら「ここか」と見かけたことはありますが、軽々しく足を踏み入れて良いものかどうか。そんな気もしておりました。

酒について、吞むことは好きですが、深い知識はない。

ある程度の知識がないと手を出してはいけないのではないか。失礼ではないのか。

そんな気もするのが個人的な“酒”へのイメージでもあります。

少し過大なイメージかもしれませんが…そんな雰囲気もあって、蔵元に足を踏み入れることには少し緊張もあります。

「“首吊り”をするから撮ってほしい」

ドキーッ!とするワードがいきなりで恐縮ですが、ご依頼のご連絡をいただいた際は困惑してしまいました(笑)

事前に酒づくりの様子を写真におさめることについてのお話をいただいておりましたので、何かの聞き間違いかと思いましたが製造工程のひとつ。

モロミから事前に滴る酒をとる袋吊りのことで、業界用語で“首吊り”と言われているよう。

歴史の長い酒づくりには他にも色々と変わった業界用語もありそう。

さて、こうした袋吊りの現場に入らせていただける機会はそうそうないもの。

醸造所までの酒の良い香りがする通路を通り、初めて入らせていただいた現場。

中ではすでに作業が始まっており、先程までの外の香りとは違った華やかな香りが充満。

(あぁ…なんで車で来ちゃったんだろう。)

搾りたてが味わえる絶好の機会。「どうぞ」と勧められた絶好の機会。

「すみません、車で来ちゃって…」

不慣れな酒蔵訪問から一番の大失態です…

最高の瞬間を味わえなかった歯がゆい思いも強くありますが、それよりも強く感じた思ってたイメージと違う雰囲気。

醸造所に入った瞬間から思ってはいましたが、もっと機械的な場所を想像していました。

意外とコンパクト?(でも十分大きいです)

あれだけ販路の広い八鹿酒造さんの酒づくりですから、ここまで人力でなされていることが意外でした。

杜氏から「ぜひ“米洗い”も見てほしい」と言われ、別日に再び訪れさせていただきました。

楽しみです。

ざっと製造風景を写真でご紹介しましたが、こちらもほぼ人力。

「状況により」とのことですが、人の手が重要。

職人的な、簡単な言葉ではまとめられないのですが、そんな雰囲気もある。

先に見せていただいた“首吊り”の現場でもそうですが、ここで酒づくりに携わっている人の雰囲気も特別なもの。

もう少し“怖い”“近寄り難い”“威厳的?”な勝手なイメージもありそうですが、それらがない。感じられない。

やさしくて真摯で控えめ。

八鹿酒造さんのHPにも記載のありますが、これは綺麗ごとの表現ではなく、まさにその通りのこと。

酒づくりは、心造り。
その一滴一滴に銘酒八鹿の伝統が生きる。
妥協を許さぬ酒造りの信念は
優れた杜氏の手と心によって代々受け継がれ、
それは時を重ねるごとに熟成され、
理想の酒造りへと近づく。
今日も『仁壽』を旨とし、美しい酒造りは、
美しい心づくりであるという精神の下、
まっすぐな酒造りに取り組んでいる。
八鹿酒造HP 人「杜氏と蔵人たち」より

この方々あってこその八鹿の酒づくり。

穏和な雰囲気のなかで、統率と判断がリズム良くとられている。

一連の工程を間近で見させていただき、一番強く感じた印象です。

これも見て。こっちも。これはこうで。

杜氏をはじめ、みなさんが気にかけて楽しそうに案内してくれる方達ばかり。

ためになるというか、ファンになる酒づくりの現場です。冒頭でお話しした蔵元・酒蔵へのイメージが完全に覆りました。

近くにあれど、なかなか知り得ないこともたくさんあります。まして、この現場に入らせていただけることはそうそうないもの。

八鹿ブランドや商品ラインナップのネームバリューは、すでに広く知られているものですが、なかなか伝わりにくいのが裏側。

この地が素晴らしい風土であることは、お住まいの方ならご存知のこと。

その中で行われている酒づくり。

同じ玖珠郡に存在する八鹿酒造さんのハイクオリティーをもっと伝えていけるお手伝いをしたいものです。

ぜひ皆さんも。